学研全訳古語辞典 |
けむ
《接続》活用語の連用形に付く。
①
〔過去の推量〕…ただろう。…だっただろう。
出典更級日記 かどで
「なほ奥つ方に生(お)ひ出(い)でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを」
[訳] さらに奥まった所(=上総(かずさ)の国)で成長した人(である私)は、どんなにか田舎じみていただろうのに。
②
〔過去の原因の推量〕…たというわけなのだろう。(…というので)…たのだろう。▽上に疑問を表す語を伴う。
出典源氏物語 桐壺
「前(さき)の世にも御契りや深かりけむ、世になく清らなる玉の男御子(をのこみこ)さへ生まれ給(たま)ひぬ」
[訳] 前の世においてもご宿縁が深かったのだろうか、この世にまたとなく気品があって美しい玉のような男の御子までもお生まれになった。
③
〔過去の伝聞〕…たとかいう。…たそうだ。
出典更級日記 足柄山
「昔、こはたと言ひけむが孫といふ」
[訳] 昔、こはたと言ったとかいう(人)の孫という。
語法
(1)名詞の上は過去の伝聞③の過去の伝聞の用法は、名詞の上にあることが多い。例「『関吹き越ゆる』と言ひけむ浦波」(『源氏物語』)〈「関吹き越ゆる」と歌に詠んだとかいう浦波が。〉(2)未然形の「けま」(上代の用法)
参考
中世以降の散文では「けん」と表記する。
けむ
過去推量の助動詞「けむ」の連体形。
出典万葉集 一〇八
「吾(あ)を待つと君が濡(ぬ)れけむ」
[訳] 私を待ってあなたがぬれたという。
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