学研全訳古語辞典 |
け-はひ
(一)
【気配】
①
ようす。雰囲気。
出典紫式部日記 寛弘五・七・中
「秋のけはひ入り立つままに、土御門殿(つちみかどどの)のありさま、言はむ方(かた)なくをかし」
[訳] 秋の雰囲気が深まるにつれ、(藤原道長(ふじわらのみちなが)様の)土御門邸のようすは言いようもなく趣がある。
②
ものごし。態度。品位。
出典源氏物語 帚木
「大方のけしき、人のけはひも、けざやかに気高く」
[訳] 邸内一帯のようすも、姫君のものごしも、すっきりとしていて上品で。
③
香り。匂い。
出典源氏物語 柏木
「御座(おまし)のあたり、物清げに、けはひ香ばしう」
[訳] お床のあたりは、さっぱりとしていて、香りがかぐわしく漂い。
④
話し声。物音。
出典徒然草 九
「人のほど、心ばへなどは、もの言ひたるけはひにこそ物越しにも知らるれ」
[訳] その人柄や気立てなどは、ものを言っている話し声によって、物を隔てて聞いていてもわかるものである。
⑤
面影。名残り。
出典源氏物語 宿木
「あやしきまで、昔の人の御けはひに、通ひたりしかば」
[訳] 不思議なくらい、亡くなった人の御面影に、似通っていたので。
⑥
血縁。ゆかり。
出典源氏物語 竹河
「六条院の御けはひ近うと思ひなすが、心ことなるにやあらむ」
[訳] (薫(かおる)は)六条の院(=源氏)のご血縁に近いとしいて思うのが、格別に見えるのであろうか。
(二)
【化粧・仮粧】化粧。
出典義経記 七
「児(ちご)を具したる旅なれば、けはひの具足を持つまじきいはれがあらばこそ」
[訳] 児を連れた旅なので、化粧の道具を持ってはならない理由があるのか。◇室町時代以降の用法。
けはひのページへのリンク |