学研全訳古語辞典 |
な-・まし
分類連語
①
〔上に仮定条件を伴って〕…てしまっただろう(に)。きっと…てしまうだろう(に)。▽事実と反する事を仮想する。
出典竹取物語 竜の頸の玉
「まして竜(たつ)を捕らへたらましかば、また事もなく我は害せられなまし」
[訳] ましてもし竜を捕らえていたなら、また、たやすく私はきっと殺されてしまっただろう。
②
〔上に疑問語を伴って〕(いっそのこと)…たものだろうか。…してしまおうか。▽ためらいの気持ちを表す。
出典源氏物語 明石
「これより深き山を求めてや、跡絶えなまし」
[訳] ここよりも深い山を探し求めて、(いっそのこと)行方をくらましてしまおうか。
③
〔終助詞「ものを」を伴って〕…してしまえばよかった(のに)。▽実現が不可能なことを希望する意を表す。
出典新古今集 哀傷・伊勢物語六
「白玉か何ぞと人の問ひしとき露と答へてけなましものを」
[訳] ⇒しらたまか…。
注意
助動詞「まし」の意味(反実仮想・ためらい・悔恨や希望)に応じて「なまし」にもそれぞれの意味がある。
なりたち
完了(確述)の助動詞「ぬ」の未然形+反実仮想の助動詞「まし」
なま-・し 【生し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
生である。生々しい。
出典今昔物語集 二八・三五
「なましき鯛(たひ)」
[訳] 生の鯛。
②
未熟である。
出典沙石集 二
「衆生(しゆじやう)の機なましき時は、感応なし」
[訳] 衆生の持っている仏性が未熟であるときは、神仏の加護はない。
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