学研全訳古語辞典 |
やく 【厄】
①
わざわい。
②
「厄年」の略。
③
疱瘡(ほうそう)。◇だれでも一度はかかるとされていたところから。
やく 【役】
①
公用のために人民に課せられる労働。
出典宇治拾遺 四・一〇
「かやうのやくに催(もよほ)し給(たま)ふは、いかなる事ぞ」
[訳] このような公用のための労働を負わせなさるのは、どうしたことだろう。
②
役目。職務。
出典源氏物語 常夏
「似つかはしからぬやくななり」
[訳] 似つかはしくない役目であるようだ。
③
唯一の仕事。
出典更級日記 子忍びの森
「そこはかなき事思ひつづくるをやくにて」
[訳] とりとめのないことを思い続けることを唯一の仕事にして。
や・く 【焼く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
燃やす。焼く。
出典伊勢物語 一二
「武蔵野(むさしの)は今日(けふ)はなやきそ」
[訳] 武蔵野を今日は焼かないでくれ。
②
熱する。加熱する。
出典万葉集 九三八
「浜を良(よ)み諾(うべ)も塩やく」
[訳] 浜が良いのでなるほど塩を焼く(=熱して製塩する)。
③
悩ます。思い焦がれさせる。
出典万葉集 三二七一
「わが心やくも我なり愛(は)しきやし君に恋ふるもわが心から」
[訳] 私の心を悩ますのも私自身である。いとしいあなたに恋をしているのも私の心からなのだから。
活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}
①
燃える。焼ける。
出典方丈記
「そのたび、公卿(くぎやう)の家十六やけたり」
[訳] その(安元の大火の)とき、公卿の家が十六軒燃えた。
②
熱せられる。熱くなる。
出典平家物語 六・入道死去
「石や鉄(くろがね)なんどのやけたるやうに」
[訳] 石や鉄などが熱せられているように。
③
思い乱れる。思い焦がれる。
出典万葉集 五
「海処女(あまをとめ)らが焼く塩の思ひそやくるわが下ごころ」
[訳] 年若い海女(あま)たちが焼く塩のように、恋に思い焦がれる私の心の底よ。
やく 【益】
利益。効果。かい。
出典源氏物語 薄雲
「命終はり侍(はべ)りなば、何のやくかは侍らむ」
[訳] 命が尽きてしまいましたら、何のかいがございましょう。
参考
ウ音便で「やう」とも。中古は、「やくなし」の形で用いられることが多い。⇒やくなし
やく 【約】
約束。契約。
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