学研全訳古語辞典 |
やす・し
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
(一)
【安し】
①
心が穏やかだ。平穏だ。不安がない。
出典源氏物語 桐壺
「同じ程、それより下﨟(げらふ)の更衣(かうい)たちは、ましてやすからず」
[訳] (桐壺更衣(きりつぼのこうい)と)同じ身分や、それより低い身分の更衣たちは、いっそう心が穏やかではなく。
②
気軽だ。軽々しい。安っぽい。
出典源氏物語 橋姫
「心に任せて、身をやすくも振る舞はれず」
[訳] 自分の好きなように気軽に行動することもできず。
(二)
【易し】
①
易しい。たやすい。容易だ。
出典徒然草 一〇九
「過ちは、やすき所になりて、必ずつかまつることに候ふ」
[訳] 失敗は易しい所になってから、必ずいたすものでございます。◇[反対語] 難(かた)し。
②
簡単だ。無造作だ。あっさりしている。
出典枕草子 御前にて人々とも
「いみじうやすき息災の祈りななり」
[訳] ずいぶん簡単な、災いよけのおまじないであるようだ。
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
〔動詞の連用形について〕…しやすい。…しがちだ。▽その動作が容易に行われる意を添える。
出典枕草子 にくきもの
「あなづりやすき人ならば、『のちに』とてもやりつべけれど」
[訳] 軽く扱いやすい人であるならば、「後で」と言って帰してしまうこともできるだろうが。
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