学研全訳古語辞典 |
いか・し 【厳し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
激しく荒々しい。
出典源氏物語 葵
「猛(たけ)くいかきひたぶる心出(い)できて」
[訳] 強く激しく荒々しい向こう見ずな心が出てきて。
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
いかめしく立派だ。
②
勢いが盛んだ。
参考
[二]は上代語で、多くは終止形(語幹)が体言を修飾したり、助詞「の」を伴ったりして使われた。「いかしの御世(みよ)」など。
いつか・し 【厳し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
いかめしく荘重だ。おごそかで立派だ。
出典源氏物語 少女
「節会(せちゑ)の日々、内裏(うち)の儀式をうつして、昔の例(ためし)よりも事添へて、いつかしき御有様なり」
[訳] 節会の日には、宮中の儀式をまねて、昔の例よりも新しい行事を付け加えて、おごそかで立派なごようすである。
いつく・し 【厳し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
威厳がある。おごそかだ。いかめしい。
出典万葉集 八九四
「皇神(すめかみ)のいつくしき国」
[訳] 皇室の祖先のおごそかな国。
②
きびしく、厳格だ。
出典源氏物語 匂宮
「いつくしうはもてなし給(たま)はず」
[訳] 厳格にはお取り計らいなさらず。◇「いつくしう」はウ音便。
③
端正で美しい。
出典今昔物語集 一・三
「めでたくいつくしき女」
[訳] すばらしく端正で美しい女。
語の歴史
③は、室町時代に入ってさらに「うつくし」と混同され「かわいらしい」の語義も生じた。
きび・し 【厳し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
すきまがない。密だ。
出典東関紀行
「松きびしく生ひつづき」
[訳] 松がすきまなく生え連なって。
②
厳重だ。つけいるすきがない。
出典徒然草 一一
「周りをきびしく囲ひたりしこそ、少しことさめて」
[訳] 周囲を厳重に囲ってあったことは、少し興がさめて。
③
いかめしい。厳かだ。
出典枕草子 内裏は、五節の頃こそ
「帳台の夜、行事の蔵人(くらうど)のいときびしうもてなして」
[訳] 帳台の試みの夜、行事の蔵人がたいそういかめしくかまえて。◇「きびしう」はウ音便。
④
険しい。
出典梁塵秘抄 四句神歌
「すぐれて山きびし」
[訳] 格別に山が険しい。
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