学研全訳古語辞典 |
それ 【夫】
そもそも。いったい。▽文のはじめに用いて、ある事柄を述べ始める語。
出典方丈記
「それ、三界(さんがい)はただ心一つなり」
[訳] そもそも、我々を取り巻く一切の万物はただ心の持ち方によって決まる。
つま 【夫・妻】
①
夫。▽妻から夫を呼ぶときに用いる語。第三者が用いることもある。
出典万葉集 一七四二
「ただ独りい渡らす児(こ)は若草の(=枕詞(まくらことば))つまかあるらむ」
[訳] たった一人で川を渡られる児(こ)は夫があるのだろうか。
②
妻。▽夫から妻を呼ぶときに用いる語。第三者が用いることもある。
出典万葉集 四三二二
「わがつまはいたく恋ひらし飲む水に影(かご)さへ見えて世に忘られず」
[訳] ⇒わがつまは…。
③
動物のつがいの一方をいう語。
出典万葉集 九二〇
「下辺(しもへ)にはかはづつま呼ぶ」
[訳] 川下では、かじかが相手を呼んでいる。
参考
「つま(端)」から出た語。妻問い婚の時代、女の家の端(つま)に妻屋(つまや)を建てて、夫がそこに通ったことから、「端の人」の意でいったとされる。ふつう、夫婦の間で互いに呼び合う語。中古以降は、②の用法で固定した。
ひこ-ぢ 【夫・彦舅】
夫(おつと)。◆上代語。
ぶ 【夫】
公の土木事業などのために一般民衆を強制的に働かせること。また、その人夫。「夫役(ぶやく)」とも。
を-うと 【夫】
おっと。◆「をひと(夫)」のウ音便。
せ 【兄・夫・背】
あなた。夫。あの人。▽女性が、夫、兄弟、恋人など自分の親しい男性をさして呼んだ語。
出典万葉集 三三九九
「信濃路(しなのぢ)は今の墾道(はりみち)刈り株(ばね)に足踏ましなむ沓(くつ)はけわがせ」
[訳] ⇒しなのぢは…。[反対語] 妹(いも)。
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