学研全訳古語辞典 |
すで-に 【已に・既に】
①
すっかり。まったく。
出典万葉集 三九二三
「天(あめ)の下すでに覆(おほ)ひて降る雪の光を見れば貴(たふと)くもあるか」
[訳] 地上をすっかり覆って降る雪の光を見ていると、尊く思われることだ。
②
〔多く下に過去や完了の表現を伴って〕もはや。もう。とっくに。
出典今昔物語集 二五・一二
「盗人はすでに射落としてけり」
[訳] 馬盗人はもはや射落としてしまった。
③
〔多く下に推量の表現を伴って〕今まさに。もう少しで。
出典沙石集 九
「すでに分かつべかりける時」
[訳] 今まさに(銀を)分け与えようとしたときに。
④
〔多く下に断定の表現を伴って〕まさしく。確かに。現に。
出典平家物語 二・少将乞請
「この少将はすでにかの大納言が嫡子なり」
[訳] この少将(=成経(なりつね))はまさしくあの大納言(成親(なりちか))の正妻の子供である。
参考
中古の和文では用いられず、漢文訓読系の文中で用いられた。中世以降和漢混交文に盛んに用いられるようになった。
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