学研全訳古語辞典 |
ひき-い・る 【引き入る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
引っ込む。
出典枕草子 宮にはじめてまゐりたるころ
「いま少し奥にひきいりて」
[訳] もう少し奥に引っ込んで。
②
引きこもる。隠れ忍ぶ。
出典奥の細道 福井
「市中ひそかにひきいりて」
[訳] 町の中からひっそりした所に引きこもって。
③
控えめにする。遠慮がちである。
出典紫式部日記 消息文
「などか、必ずしも、面(おも)にくくひきいりたらむが、かしこからむ」
[訳] どうして必ずしも、とりすまして遠慮がちにしているようなのが、賢いといえましょうか。
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
引いて中へ入れる。引っ張り込む。
出典蜻蛉日記 下
「中門おしあけて、車ごめひきいるるを見れば」
[訳] 中門を押し開けて、乗ったままのその車を、中へ引いて入れるのを見ると。
②
(物の怪(け)などが)人の魂を取り込む。死なせる。
出典源氏物語 夕霧
「さる弱目(よわめ)に例の御物の怪(け)のひきいれ奉る」
[訳] そのように弱っている折に、いつもの御物の怪が魂を取り込み申し上げる(=死なせる)。
③
深くかぶる。
出典徒然草 二二五
「烏帽子(えぼし)をひきいれたりければ」
[訳] 烏帽子を深くかぶっていたので。
注意
自動詞([一])の意味・用法は現代語にはない。他動詞([二])は現代語「引き入れる」に対応する。
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