学研全訳古語辞典 |
うる・ふ 【憂ふ】
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
心配する。心を痛める。
出典土佐日記 一・七
「とかく言ひ言ひて、『波の立つなること』とうるへ言ひて、よめる歌」
[訳] (その人は)あれこれと言い言いして、「波が立つのが聞こえてくることだ」と心配して言って、詠んだ歌。
うれ・ふ 【憂ふ・愁ふ】
{語幹〈うれ〉}
①
嘆き訴える。ぐちをこぼす。
出典宇治拾遺 六・一
「地獄におちて苦を受くるに、うれへ申すことのあるによりて」
[訳] 地獄に落ちて苦しみを受けているが、嘆き訴えることがあるので。
②
悲しむ。嘆く。悲しみ嘆く。
出典平家物語 一・祇園精舎
「天下(てんが)の乱れんことを悟らずして、民間のうれふるところを知らざっしかば」
[訳] 国が混乱するであだろうことを悟らないで、民衆が悲しみ嘆くことを察しなかったので。
③
心配する。気づかう。
出典方丈記
「世の人安からずうれへあへる、げにことわりにも過ぎたり」
[訳] 世の中の人々が不安そうに心配し合っているのは、なるほど当然すぎることであった。
④
病気になる。患う。
出典今昔物語集 七・二五
「この人、昔は身の病をうれへき、今は人の病を癒(いや)しぬ」
[訳] この人は、昔は自分が病気を患ったが、今は他人の病気を治してしまう。
活用{ひ/ひ/ふ/ふる/ふれ/ひよ}
①
心を悩ませる。嘆き悲しむ。
出典蕪村句集 俳諧
「うれひつつ岡(をか)にのぼれば花いばら―蕪村」
[訳] ⇒うれひつつ…。
②
病気になる。患う。
参考
下二段活用が古い。上二段活用は「うれへ」が音変化して「うれひ」になったものか。上二段は近世の版本の誤りともいわれている。
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