学研全訳古語辞典 |
けぶり 【煙・烟】
①
けむり。
出典方丈記
「あるいはけぶりにむせびて倒れ伏し、あるいは焰(ほのほ)にまぐれてたちまちに死ぬ」
[訳] ある者はけむりにむせて倒れ伏し、ある者は炎に目がくらんですぐに死んでしまう。
②
水蒸気。霞(かすみ)。霧。もや。塵(ちり)。▽けむりのようにたなびいたり、かすんだり、立ちのぼったりするもの。
出典徒然草 一九
「霜いと白う置ける朝(あした)、遣(や)り水よりけぶりの立つこそをかしけれ」
[訳] 霜がたいそう白く降りている朝、庭の小さな流れから水蒸気が立ちのぼるのは趣がある。
③
火葬のけむり。
出典源氏物語 桐壺
「母北の方、『同じけぶりにも上りなむ』と泣きこがれ給(たま)ひて」
[訳] 母北の方は、「娘と同じ火葬のけむりとなって空へのぼってしまいたい」と泣き慕いなさって。
④
炊事のけむり。▽暮らし・生活を意味する。
出典源氏物語 蓬生
「けぶり絶えて、あはれにいみじきこと多かり」
[訳] (末摘花(すえつむはな)の家は朝夕の)炊事のけむりもとだえて、かわいそうでひどいことが多い。◆「けむり」の古い形。
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