学研全訳古語辞典 |
すぐ・なり 【直なり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
①
まっすぐだ。
出典平家物語 一一・遠矢
「平家の舟の下をすぐにはうで通りけり」
[訳] (いるかが)平家の舟の下をまっすぐに泳いで通っていった。
②
素直だ。ありのままだ。
出典平家物語 二・阿古屋之松
「すぐに知らせ奉っては悪(あ)しかりなん」
[訳] ありのままにお知らせ申し上げては不都合であろう。
参考
「すぐなり」と「ただ(直)なり」「なほ(直)」「ひた(直)」の違い 「すぐなり」は、曲がらずに一直線であることを表すが、「ただなり」は直接的でへだてがない(=じかである)ことを、「なほ」は、曲がりくねる(=変化する)ことなく続くこと(=平凡・普通)を、「ひた」は、直接に・まっすぐに・いちずになど、色々な意味を表す。
ただ・なり 【直なり・徒なり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
①
直接だ。じかだ。まっすぐだ。
出典万葉集 四九六
「み熊野(くまの)の浦の浜木綿(はまゆふ)百重(ももへ)なす心は思(も)へどただに逢(あ)はぬかも」
[訳] ⇒みくまのの…。
②
生地のままだ。ありのままだ。
出典源氏物語 宿木
「ただなる絹綾(きぬあや)など取り具し給(たま)ふ」
[訳] (染めていない)生地のままの模様のある絹織物をおそろえになられる。
③
普通だ。あたりまえだ。
出典枕草子 うらやましげなるもの
「ただなるところには目にもとまるまじきに」
[訳] (女の言葉は)普通の所では目にもとまるまいに。
④
何もせずにそのままである。何事もない。
出典源氏物語 藤裏葉
「ただに見過ぐさむこと惜しき盛りなるに」
[訳] 何もせずにそのまま見過ごしてしまうには惜しい花盛りなので。
⑤
むなしい。何の効果もない。
出典大鏡 道長上
「ただにて帰り参りて侍(はべ)らむは、証(さう)候(さぶら)ふまじきにより」
[訳] むなしく(手ぶらで)帰って参りましたとしたら、行ったという証拠がございますまいから。
ぢき・なり 【直なり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
①
まっすぐだ。
出典太平記 一三
「両の耳は竹を剝(そ)いでぢきに天を指し」
[訳] 両耳は竹をそいだようにまっすぐに天を指し。
②
直接だ。じかだ。
出典平家物語 五・咸陽宮
「まったく人しては参らせじ。ぢきに奉らん」
[訳] 決して他の人を介しては差し上げません。直接に差し上げたい。
③
即座だ。すぐだ。
出典膝栗毛 滑稽
「子どもとあなどって、ぢきにむくったと」
[訳] 子供だとばかにして、すぐに報いがあったと。
なほ・なり 【直なり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
まっすぐだ。いつわりがない。
出典万葉集 一三九三
「まなほにしあらば何か嘆かむ」
[訳] まっすぐであれば、どうして嘆くことがあろうか。
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