学研全訳古語辞典 |
なる
推定・伝聞の助動詞「なり」の連体形。
出典万葉集 六六〇
「汝(な)をと吾(あ)を人そ離(さ)くなる」
[訳] あなたと私との仲を、人がさいているようだ。
なる
断定の助動詞「なり」の連体形。
出典古今集 羇旅
「春日(かすが)なる三笠(みかさ)の山に」
[訳] ⇒あまのはら…。
な・る 【慣る・馴る】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
慣れる。
出典更級日記 物語
「たれもいまだ都なれぬほどにて、え見つけず」
[訳] だれもがまだ都に慣れていないころなので、見つけ出すことができない。
②
うちとける。なじむ。親しくなる。
出典古今集 羇旅・伊勢物語九
「唐衣(からころも)きつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞ思ふ」
[訳] ⇒からころも…。
③
よれよれになる。体によくなじむ。
出典源氏物語 若紫
「山吹(やまぶき)などのなれたる着て」
[訳] 山吹襲(がさね)かなにかの体によくなじんだものを着て。◇「萎る」とも書く。
④
古ぼける。
出典源氏物語 蓬生
「御調度(おほんてうど)どもも、いと古体になれたるが」
[訳] 御調度品の数々も、たいへん古風で古びているが。◇「褻る」とも書く。
な・る 【成る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
(別の状態に)なる。変わる。
出典更級日記 子忍びの森
「今はまいて大人になりにたるを」
[訳] 今はまして大人になってしまっているので。
②
(地位に)就く。任官する。なる。
出典更級日記 子忍びの森
「わづかになりたる国を辞し申すべきにもあらねば」
[訳] やっと任官した国を辞退申し上げるわけにもいかないので。
③
実現する。完成する。
出典徒然草 一八八
「いづ方をも捨てじと心にとり持ちては、一事もなるべからず」
[訳] どれをも捨てまいと執着していては、一つのことも完成することはできない。
④
(歳月が)たつ。なる。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「かぐや姫を養ひ奉ること二十余年になりぬ」
[訳] かぐや姫を養い申し上げることが二十年あまりになった。
⑤
実を結ぶ。生育する。実る。
出典方丈記
「よからぬことどもうち続きて、五穀ことごとくならず」
[訳] よくないことがいろいろと続いて起こって、穀物はどれも実を結ばない。◇「生る」とも書く。
⑥
おいでになる。お行きになる。▽貴人の動作を尊敬していう語。
出典中務内侍
「御所になりぬるとてあれば皆起きて参る」
[訳] (皇太子が)御所においでになったというので、皆起きて参上する。◇中世以降の用法。
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
〔敬意を含む漢語に付いて〕…なさる。お…になる。
出典平家物語 灌頂・大原御幸
「法皇、夜をこめて大原の奥へぞ御幸(ごかう)なる」
[訳] 法皇は、夜がまだ深い時分に大原の奥へお出かけになる。◇中古末期にも用例があるが、一般的には中世の用法。
な・る 【業る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
生業とする。生産する。営む。
出典万葉集 四三六四
「家の妹(いも)がなるべき事を言はず来(き)ぬかも」
[訳] 家の妻に生計を立ててゆくことのできる方法を言わないで来たことだ。
な・る 【生る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
生まれる。
出典古事記 神代
「高天(たかま)の原になれる神の名は」
[訳] 高天の原に生まれた神の名前は。
②
実がなる。結実する。
出典徒然草 一一
「柑子(かうじ)の木の、枝もたわわになりたるが」
[訳] こうじみかんの木で、枝もたわみしなうほどに、実がなっているのが。
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