ひきいづ

学研全訳古語辞典

ひき－い・づ 【引き出づ】

他動詞ダ行下二段活用

活用 ｛で／で／づ／づる／づれ／でよ｝

① 引っ張り出す。引き出す。

出典 更級日記 物語

「心も得ず心もとなく思ふ源氏を、一の巻（まき）よりして、…ひきいでつつ見る心地」

[訳] （話の筋も）理解できず、じれったく思っていた『源氏（物語）』を、一の巻から読み始めて、…（櫃（ひつ）から一冊ずつ）取り出しては読んでゆく気持ち。

② 引き合いに出す。例としてあげる。

出典 源氏物語 桐壺

「楊貴妃（やうきひ）の例（ためし）も、ひきいでつべうなりゆくに」

[訳] （唐の）楊貴妃の先例も引き合いに出すにちがいないほどになってゆくので。

③ 事をおこす。しでかす。

出典 源氏物語 柏木

「さるまじき過ちをひきいでて」

[訳] おこしてはいけない過ちをおこして。