学研全訳古語辞典 |
ひ 【氷】
①
こおり。夏用に氷室(ひむろ)に貯蔵した。
②
雹(ひよう)。氷雨(ひさめ)。
出典源氏物語 明石
「地の底通るばかりのひ降り」
[訳] 地の底まで通るほどのひょうが降り。
ひ 【日】
①
太陽。日光。
出典万葉集 三五六一
「ひが照(と)れば」
[訳] 太陽が照ると。
②
昼間。昼。日中。
出典古事記 景行
「夜(よ)には九夜(ここのよ)、ひには十日を」
[訳] 夜では九夜、昼では十日になりますなあ。
③
一日。日数。▽時の単位としての日。
出典土佐日記 一・一五
「いたづらにひを経(ふ)れば、人々海を眺めつつぞある」
[訳] むだに日数を過ごしたので、人々は海を眺めてばかりいる。
④
期日。日。時。折。
出典源氏物語 宿木
「今日は内裏(うち)に参るべきひなれば」
[訳] 今日は宮中に参内しなければならない日なので。
⑤
天気。空模様。
出典土佐日記 二・五
「船疾(と)く漕(こ)げ。ひのよきに」
[訳] 船を急いで漕げ。天気がよいから。
⑥
太陽神である天照大神(あまてらすおおみかみ)。また、その子孫としての天皇や皇子。万葉集四五「高照らす(=枕詞(まくらことば))ひの皇子(みこ)」
[訳] 天照大神の(子孫である)皇子。
ひ 【火】
①
燃える火。炎。
出典古事記 景行
「さねさし相模(さがむ)の小野に燃ゆるひの」
[訳] ⇒さねさし…。
②
炭火。おき。
出典枕草子 春はあけぼの
「いと寒きに、ひなど急ぎおこして」
[訳] たいそう寒いときに、炭火などを急いで起こして。
③
火事。
出典枕草子 せめておそろしきもの
「近きひ、またおそろし」
[訳] 近所の火事は、また恐ろしい。
④
ともし火。灯火。
出典万葉集 三六四八
「海原(うなはら)の沖辺(おきへ)にともし漁(いざ)るひは」
[訳] 広い海の沖のあたりにともして漁をする火は。
⑤
のろし。
出典平家物語 二・烽火之沙汰
「所々(しよしよ)にひをあげ、太鼓を打って」
[訳] あちこちでのろしをあげ、太鼓をならして。
ひ 【非】
①
道理に反すること。
出典平家物語 一・願立
「ひをもって理とす」
[訳] 道理に反することをもって(ここでは)道理とする。
②
欠点。短所。
出典徒然草 一三四
「身の上のひを知らねば、まして外(ほか)のそしりを知らず」
[訳] わが身の欠点をわからないと、ましてほかの人の(自分に対する)非難もわからない。
③
不利。
ひ 【緋】
燃えるように濃く明るい朱色。律令制では、四位・五位の装束の色とする。あけ(朱)。
ひ 【檜】
木の名。ひのきの古名。
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