学研全訳古語辞典 |
もの-・す 【物す】
{語幹〈もの〉}
①
いる。ある。
出典蜻蛉日記 中
「日ごろものしつる人、今日ぞ帰りぬる」
[訳] 数日間、いた人が、今日帰ってしまう。
出典源氏物語 桐壺
「いと押し立ち、かどかどしきところものし給(たま)ふ御方(おほんかた)にて」
[訳] たいそう我を張り、とげとげしいところがおありになるお方であって。
②
行く。来る。
出典源氏物語 若紫
「『いと忍びてものせむ』とのたまひて、…まだ暁におはす」
[訳] 「できるだけこっそりと行こう」とおっしゃって、…まだ朝も明けないうちにお出かけになる。
出典源氏物語 野分
「中将はいづこよりものしつるぞ」
[訳] 中将(=夕霧)はどこから来たのか。
③
生まれる。死ぬ。
出典源氏物語 橋姫
「年ごろ経(ふ)るに、御子のものし給(たま)はで、心もとなかりければ」
[訳] 何年もたつのに、(北の方に)お子様がお生まれにならないで、(八の宮は)気がかりだったので。
活用{せ/し/す/する/すれ/せよ}
(ある動作を)する。
出典土佐日記 一・九
「心地悪(あ)しみして、物もものし給(た)ばで」
[訳] 気分が悪いと訴えて、何も飲んだり食べたりしなさらないで。
出典落窪物語 一
「さる御文(おほんふみ)をだにものせさせ給(たま)へ」
[訳] せめてそのようなお手紙だけでもお書きください。
活用{せ/し/す/する/すれ/せよ}
〔尊敬の補助動詞「給(たま)ふ」を伴って〕(…で)おありになる。(…て)いらっしゃる。
出典源氏物語 若紫
「いで、あな幼や。いふかひなうものし給(たま)ふかな」
[訳] いやもう、まあ子供っぽいことよ。たわいなくいらっしゃることよ。
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