学研全訳古語辞典 |
おらが春
分類書名
俳文・俳諧(はいかい)集。小林一茶(いつさ)作。江戸時代後期(一八五二)成立。一冊。〔内容〕文政二年(一八一九)一茶五十七歳のときに書いた俳句を交えた随筆で、身辺雑事の感想が日記体でしるしてあり、娘の「さと」を思う気持ちが読者の心をうつ。一茶自筆の挿絵もある。
は・る 【墾る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
開墾(かいこん)する。新たに土地を切り開いて田畑や道・池などを作る。
出典万葉集 二二四四
「住吉(すみのえ)の岸を田にはり蒔(ま)きし稲」
[訳] 住吉の岸を田に開墾してまいた稲。◆上代語。
は・る 【張る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
(氷が)はる。一面に広がる。
出典平家物語 九・木曾最期
「入り相(あひ)ばかりの事なるに、薄氷ははったりけり」
[訳] 夕暮れ時のころであったうえ、薄氷がはっていた。◇「はっ」は促音便。
②
(芽が)ふくらむ。出る。芽ぐむ。
出典万葉集 一七〇七
「山城(やましろ)のくせの鷺坂(さぎさか)神代より春ははりつつ秋は散りけり」
[訳] 山城の国の久世の鷺坂では神代から春は芽が出ては秋には散ったことだ。
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
一面に広げる。(縄などを)張る。
出典徒然草 一〇
「鳶(とび)ゐさせじとて、縄をはられたりけるを」
[訳] とびを止まらせまいとして、縄をお張りになっていたのを。
②
張りつける。(紙などを)張る。
出典枕草子 中納言まゐり給ひて
「隆家(たかいへ)こそいみじき骨は得て侍(はべ)れ。それをはらせて参らせむとするに」
[訳] (わたくし)隆家は、とてもすばらしい扇の骨を手に入れましたよ。それに紙を張らせてさしあげようと思いますが。
③
(気を)引き締める。緊張させる。
出典太平記 一七
「おのおの気をはり心を専(もつぱ)らにして」
[訳] それぞれが気を引き締めて心を集中して。
④
構え設ける。張る。
出典平家物語 八・室山
「平家は陣を五つにはる」
[訳] 平家は陣を五か所に構え設ける。
⑤
平手でたたく。なぐる。
出典平家物語 八・鼓判官
「わ殿を鼓判官(つづみはうがん)といふは、よろづの人に打たれたうか、はられたうか」
[訳] あなたを鼓判官というのは、多数の人に打たれなさったからか、たたかれなさったからか。◇「張る」は「鼓を張る」と「頰(ほお)を張る」とを通じさせた表現。
はる 【春】
①
四季の一つ。立春から立夏まで。ほぼ陰暦の一、二、三月をいう。
②
新年。正月。
出典おらが春 俳文
「目出度(めでた)さもちう位なりおらがはる―一茶」
[訳] ⇒めでたさも…。
注意
古文では陰暦であるため、太陽暦の現代とは約一か月のずれがある。
参考
和歌では芽が伸びふくらむの意の「張る」と掛け詞(ことば)に用いることがある。
は・る 【晴る・霽る】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
晴れる。
②
憂いや悩みが解消する。心がはればれとする。
出典源氏物語 賢木
「ましてはるる世なき、中宮の御心のうちなり」
[訳] それ以上に憂いが解ける間もない、中宮のお心のうちである。
③
広々とする。
出典源氏物語 末摘花
「額(ひたひ)つきこよなうはれたるに」
[訳] 額のようすはこの上もなく広々としている上に。
④
広く開ける。見晴らしがきく。
出典方丈記
「谷しげけれど、西はれたり」
[訳] 谷は草木が茂っているが、西の方は見晴らしがきいている。
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