学研全訳古語辞典 |
ば
《接続》活用語の未然形、已然形に付く。
(一)
未然形に付く場合。〔順接の仮定条件〕…たら。…なら。…ならば。
出典古今集 春上・伊勢物語八二
「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」
[訳] ⇒よのなかにたえてさくらの…。
(二)
已然形に付く場合。
①
〔順接の確定条件、原因・理由〕…ので。…から。
出典伊勢物語 九
「京には見えぬ鳥なれば、皆人見知らず」
[訳] 都では見かけない鳥であるので、そこにいる人は皆、よく知らない。
②
〔順接の確定条件、偶然の条件〕…と。…たところ。
出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり」
[訳] (根元の光る竹に近寄って)それを見たところ、三寸(=約九センチ)ほどである人が、(竹の中に)とてもかわいらしいようすで座っている。
③
〔順接の恒常条件〕…と決まって。…ときはいつも。
出典徒然草 七
「命長ければ、恥多し」
[訳] 命が長いと決まって、(それだけ)恥をかくことも多い。
④
〔二つの事柄を並列・対照〕…と、一方では。
出典平家物語 五・月見
「古き都は荒れゆけば、今の都は繁昌(はんじやう)す」
[訳] 旧都が荒れ果てていくと、一方では新都は繁盛してゆく。◇中世以降の用法。
語法
逆接の確定条件の「ば」(二)の已然形接続の「ば」は普通は順接の確定条件であるが、逆接の確定条件を示すかのように訳した方がよい場合もある。この場合は、多く、打消の助動詞「ず」の已然形「ね」に付いた「ねば」の形をとり、「…のに」「…にもかかわらず」などと訳す。「秋立ちて幾日(いくか)もあらねばこの寝ぬる朝けの風は袂(たもと)寒しも」(『万葉集』)〈秋になってまだ幾日もたっていないのに、この寝ているところに吹く夜明けの風は、袂に寒く感じられるよ。〉
参考
接続助詞「ば」の接続と用法
語の歴史
室町時代後期以降、「未然形+ば」の形が少なくなり、次第に、「已然形+ば」の形で順接の仮定条件を表すようになる。これが現代語の「仮定形+ば」につながる。
ば
係助詞「は」が格助詞「を」に付き、濁音化したもの。
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