学研全訳古語辞典 |
はるののに…
分類和歌
「春の野に霞(かすみ)たなびきうら悲しこの夕影に鶯(うぐひす)鳴くも」
出典万葉集 四二九〇・大伴家持(おほとものやかもち)
[訳] 春の野に霞がたなびいてもの悲しい思いがする。この夕方の光の中でうぐいすが鳴いているよ。
鑑賞
大伴家持の叙情歌の代表作の一つ。春の夕暮れ時の、もの悲しい哀愁を詠んだ歌で、夕方の薄明かりに鳴くうぐいすの声に感傷をそそられているところに、作者の自然観照の繊細さがうかがえる。単純・素朴な万葉風から、平安時代の優美な貴族文学への移行を感じさせる歌でもある。「鳴くも」の「も」は、詠嘆の意を添える終助詞。
はるののに…
分類和歌
「春の野にすみれ摘みにと来(こ)し我そ野をなつかしみ一夜(ひとよ)寝にける」
出典万葉集 一四二四・山部赤人(やまべのあかひと)
[訳] すみれを摘むために春の野に来たこの私は、野が離れがたいので、そこで寝て一晩を明かしてしまったよ。
鑑賞
春の野遊びの楽しさを詠んだ歌。「寝にける」の「ける」は、係助詞「ぞ(そ)」の結びで、助動詞「けり」の連体形。
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