学研全訳古語辞典 |
す 【為】
{*語幹・活用語尾が同じ}
①
感じられる。する。
出典古今集 夏
「五月(さつき)待つ花橘(はなたちばな)の香(か)をかげば昔の人の袖(そで)の香ぞする」
[訳] ⇒さつきまつ…。
②
する。▽ある動作・状態がおこる。
出典源氏物語 桐壺
「御息所(みやすどころ)、はかなき心地に患ひて、まかでなむとし給(たま)ふを」
[訳] 御息所(=桐壺更衣(きりつぼのこうい))はちょっとした病気になって、里に退出してしまおうとなさるが。
活用{せ/し/す/する/すれ/せよ}
①
行う。する。
出典土佐日記 一二・二一
「男もすなる日記(にき)といふものを」
[訳] 男も書くという日記というものを。
②
する。▽ある状態におく。
出典徒然草 二二
「立ち明かし、しろくせよ」
[訳] 庭に立てるたいまつを、明るく燃やせ。
③
みなす。扱う。する。
出典徒然草 一六七
「善に誇らず、物と争はざるを徳とす」
[訳] 善行を自慢せず、人と争わないことを美徳とする。
語法
「愛す」「対面す」「恋す」などのように、体言や体言に準ずる語の下に付いて、複合動詞を作る。
ため 【為】
①
ため。▽目的とすることを表す。
出典徒然草 一八八
「説経師にならんために、まづ馬に乗り習ひけり」
[訳] 経文を説く僧になろうとするために、まず馬に乗ることを習った。
②
ため。▽利益になるようにすることを表す。
出典古今集 春上
「君がため春の野に出(い)でて若菜摘むわが衣手(ころもで)に雪は降りつつ」
[訳] ⇒きみがためはるののにいでて…。
③
ゆえ。せい。▽原因・理由を表す。
出典徒然草 二四〇
「かくあやしき身のために、あたら身をいたづらになさんやは」
[訳] こんなにいやしい身の上のせいで、惜しいことに、その一生をむだにするだろうか、いや、むだにしない。
④
〔「…の(が)ため」の形で〕…にとっては。…に関しては。▽関係していることを表す。
出典徒然草 七三
「わがため面目あるやうに言はれぬる虚言(そらごと)は、人いたくあらがはず」
[訳] 自分にとって面目が立つように言われたうそに対しては、人はたいして抵抗しない。
イ 【位・囲・威・為・韋・違・遺】
⇒ゐ
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