学研全訳古語辞典 |
あた 【仇・敵・賊】
①
敵。外敵。
出典万葉集 四三三一
「しらぬひ(=枕詞(まくらことば))筑紫(つくし)の国はあた守る鎮(おさ)への城(き)そと」
[訳] 筑紫の国は外敵を防ぐしずめのとりでだぞと。
②
かたき。仇敵(きゆうてき)。
出典伊勢物語 三一
「ある御達(ごたち)の局(つぼね)の前を渡りけるに、何のあたにか思ひけむ」
[訳] (男が)ある身分の高い女房のつぼねの前を通ったときに、(男を)どういうかたきに思ったのだろうか。
③
害。
出典酒呑童子 御伽
「丹波(たんば)の国大江山には鬼神がすみてあたをなす」
[訳] 丹波の国の大江山には鬼が住んでいて(人々に)害を加える。
④
恨み。恨みの種。
出典今昔物語集 二四・二〇
「年来(としごろ)棲(す)みける妻(め)を去り離れにけり。妻、深くあたを成して嘆き悲しみけるほどに」
[訳] 長年連れ添った妻を離縁した。妻はこれを深く恨みに思って嘆き悲しんでいたうちに。
注意
近世以降、「あだ」というようになる。「あだ(徒)なり」は別語。
参考
「当たる」の語幹から派生した語で、自分に当たってくるもの・自分に向かってくるものの意。
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