学研全訳古語辞典 |
-こう 【公】
①
大臣など貴人の姓名に付けて、尊敬の意を表す。「清盛公」「道長公」。
②
(時に応じて)同輩や目下の者の名などに付けて、親しみや、軽い軽べつの意を表す。
こう 【公】
①
朝廷。おおやけ。
②
大臣。
きみ。▽対称の人称代名詞。敬意を含んで、同等の人をさす。
おほ-やけ 【公】
①
朝廷。政府。
出典更級日記 竹芝寺
「ろんなくもとの国にこそ行くらめと、おほやけより使ひ下りて追ふに」
[訳] もちろん故郷の国に行っているのだろうと、朝廷から使いが下り(この男を)追いかけるけれども。
②
天皇。▽皇后や中宮を含むときもある。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「いみじく静かに、おほやけに御文(おほんふみ)奉り給(たま)ふ」
[訳] (かぐや姫は)たいそう静かに、天皇にお手紙を差し上げなさる。
③
公的なこと。社会的なこと。表向き。
出典徒然草 一七五
「おほやけ・私(わたくし)の大事を欠きて、煩(わづら)ひとなる」
[訳] 公・私ともに大切な事をおろそかにして、面倒なことになる。[反対語] 私(わたくし)。
おおやけ 【公】
⇒おほやけ
きみ 【君・公】
①
天皇。帝(みかど)。
出典万葉集 四四六五
「天(あま)の日嗣(ひつ)ぎと継ぎて来るきみの御代(みよ)御代」
[訳] 皇祖以来のみ位として継承してきた天皇の御代御代に。
②
主君。主人。
出典徒然草 五九
「きみの恩、人の情け、捨てがたしとて捨てざらんや」
[訳] 主君の恩、人の情愛を、捨てかねるからといって、捨てないでいられようか、いや、捨てないではいられない。
③
お方。▽貴人を敬っていう語。
出典源氏物語 桐壺
「このきみをば、私物(わたくしもの)に思(おぼ)ほしかしづき給(たま)ふこと限りなし」
[訳] このお方(=光源氏)を、(帝(みかど)は)自分のたいせつな子としてお心にかけて大切にご養育なさることこの上もない。
④
君。▽人名・官名などの下に付いて、「…の君」の形で、その人に敬意を表す。
出典枕草子 清涼殿の丑寅のすみの
「宰相のきみぞ十ばかり、それもおぼゆるかは」
[訳] 宰相の君が(『古今和歌集』の歌の下の句を)十首ほど(申し上げるが、それぐらいでは)、それも思い浮かぶなどと言えるであろうか、いや、言えない。
⑤
遊女。
出典好色一代男 浮世・西鶴
「腰に付けたるはした銭を投ぐれば、きみたち声をあげて」
[訳] 腰に付けていたはした金を投げると、遊女たちは声をあげて。
あなた。▽対称の人称代名詞。親愛の意を表す。
出典伊勢物語 二三
「比べ来(こ)し振り分け髪も肩過ぎぬきみならずして誰(たれ)か上ぐべき」
[訳] ⇒くらべこし…。
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