学研全訳古語辞典 |
ふく・む 【含む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
ふくらんでいる。ふくらむ。
出典源氏物語 若菜上
「指貫(さしぬき)の裾(すそ)つ方、少しふくみて」
[訳] 指貫の裾の方が、少しふくらんでいて。
活用{ま/み/む/む/め/め}
①
中に包み持つ。中に入れる。
出典平家物語 九・木曾最期
「太刀の先を口にふくみ、馬より逆さまに飛び落ち、貫(つらぬ)かってぞ失(う)せにける」
[訳] (今井兼平(かねひら)は)太刀の先を口に入れて、馬から逆さまに飛び落ち、(太刀に)貫かれて自害してしまった。
②
心にとどめおく。心中にいだく。
出典平家物語 七・平家山門連署
「いやしくも勅命をふくんでしきりに征罰を企つ」
[訳] 身分不相応にも勅命を心中にいだいて、しばしば(源氏)征伐を企てる。
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
①
含ませる。口に入れる。
出典日本書紀 孝徳
「ふくむるに珠玉(たま)を以(もつ)てすること無(まな)」
[訳] (葬儀の際死者の口に)珠玉を含ませる習慣はやめよ。
②
納得させる。言い聞かせる。
出典宇治拾遺 一〇・六
「『今より後は、かかる事なせそ』と言ひふくめて許しつ」
[訳] 「今から後は、このようなことはけっしてするなよ」と言い聞かせて許した。
ふふ・む 【含む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
花や葉がふくらんで、まだ開ききらないでいる。つぼみのままである。
出典万葉集 四〇七七
「桜花いまだふふめり」
[訳] 桜の花はまだつぼみのままであった。
活用{ま/み/む/む/め/め}
口に含む。
出典霊異記 中
「時に先の夫(を)の烏(からす)、食物をふふみ持ち来たりて」
[訳] その時に、さっきの雄の烏は、(ひなのために)食物を口に含んで持って来て。
くく・む 【銜む・含む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
①
口の中に含む。
出典蜻蛉日記 下
「氷(ひ)くくみたる声にて」
[訳] 氷を口の中に含んだ声で。
②
(物)の中に包む。くるむ。
出典狭衣物語 四
「むつきにくくまれ給(たま)へる、女帝(によたい)にゆづり置き」
[訳] 産着(うぶぎ)にくるまれていらっしゃる方に、女帝として(位を)譲り残し。
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
①
口の中に含ませる。
出典源氏物語 薄雲
「うつくしげなる御乳(ち)をくくめ給(たま)ひつつ」
[訳] (紫上は)かわいらしげなお乳を(養女の姫君の)口の中に含ませなさりながら。
②
納得させる。言い聞かせる。
出典枕草子 能因本・職の御曹司におはします頃、西の廂にて
「言ひくくめてやりたれば」
[訳] よく言って納得させてやったところ。
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