学研全訳古語辞典 |
う・つ 【打つ】
活用{た/ち/つ/つ/て/て}
①
たたく。ぶつける。打ちつける。
出典平家物語 一一・那須与一
「磯(いそ)うつ波も高かりけり」
[訳] 磯に打ちつける波も高かった。
②
(楽器や手などを)打ち鳴らす。
出典今昔物語集 三一・三三
「うたぬに鳴る鼓(つづみ)といふものあり」
[訳] 打ち鳴らさないのに音が鳴る鼓というものがある。
③
(額(がく)・札(ふだ)などを)打ちつける。打って掲げる。
出典平家物語 一・額打論
「わが寺々の額(がく)をうつことあり」
[訳] それぞれ自分の寺の額を打ちつけることがある。
④
(つやを出すため、布を)砧(きぬた)で打つ。
出典枕草子 うれしきもの
「ものの折りに衣(きぬ)うたせにやりて」
[訳] 何かの機会に着物を砧で打たせにやって。
⑤
(仮設物などを)設ける。
出典宇津保物語 藤原の君
「賀茂(かも)のほとりに桟敷(さじき)うちて」
[訳] 賀茂川のほとりに桟敷を設けて。
⑥
たたいて鍛える。加工する。
出典奥の細道 出羽三山
「潔斎(けつさい)して剣(つるぎ)をうち」
[訳] 心身を清めて刀をたたいて鍛え。
⑦
投げて当てる。投げつける。また、(水などを)まく。
出典宇津保物語 蔵開中
「柑子(かうじ)を一つ投げて大将をうつ人あり」
[訳] みかんを一つ投げて大将に当てる人がいる。
⑧
耕す。掘り起こす。
出典万葉集 二四七六
「うつ田には稗(ひえ)はあまたにありといへど」
[訳] 耕す田にはひえはたくさんあるというけれども。
⑨
(文字に点を)つける。
出典徒然草 一六三
「太衝(たいしよう)の太の字、点うつ、うたずといふこと」
[訳] 太衝(=陰陽(おんよう)道で用いる陰暦九月の別名)の太の字に、点をつける、つけないということで(議論があった)。
⑩
勝負事をする。
出典徒然草 一一〇
「勝たんとうつべからず、負けじとうつべきなり」
[訳] (すごろくは)勝とうと(思って)うってはならない、負けまいと(思って)うつべきである。
⑪
(動作・興行などを)する。行う。やる。
出典瓜盗人 狂言
「夜、瓜(うり)を取るには転びをうって取るがよい」
[訳] 夜、瓜を取るには(よく見えないから)転ぶしぐさをやって取るのがよい。
⑫
攻め滅ぼす。殺す。
出典平家物語 一一・能登殿最期
「義盛(よしもり)が童(わらは)、主(しゆう)をうたせじと中に隔たる」
[訳] 義盛の童は、主人を殺させまいと間に立つ。◇「討つ」「撃つ」とも書く。
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