学研全訳古語辞典 |
ぬ・く 【抜く】
活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}
①
抜ける。離れる。出る。
出典徒然草 五三
「耳鼻欠けうげながらぬけにけり」
[訳] 耳と鼻が欠けて穴があいたまま(頭にかぶった鼎(かなえ)は)抜けてしまった。
②
抜きん出る。秀でる。優れる。
出典源氏物語 絵合
「齢(よはひ)足らで官(つかさ)・位(くらゐ)高くのぼり、世にぬけぬる人の」
[訳] 年齢が足りない(=若い)うちに官も位も高い位置にのぼり、世に抜きん出た人は。
③
はずれる。逃げ出す。
出典平家物語 八・妹尾最期
「群(ぐん)にぬけて追うてゆく」
[訳] 軍勢からはずれて追って行く。
活用{か/き/く/く/け/け}
①
取り出す。取り去る。引き抜く。
出典今昔物語集 二九・一八
「その御髪(みぐし)の丈(たけ)に余りて長ければ、それを抜き取りて鬘(かつら)にせむとてぬくなり」
[訳] そのおぐしが背丈よりも長いから、それを抜き取ってかつらにしようと思って引き抜くのだ。
②
ごまかす。だます。
出典末広がり 狂言
「太郎冠者(たらうくわじや)は都でぬかれて参ったと見えた」
[訳] 太郎冠者は都でだまされて帰って参ったと見えた。
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