学研全訳古語辞典 |
お・つ 【落つ】
活用{ち/ち/つ/つる/つれ/ちよ}
①
落ちる。落下する。
出典源氏物語 桐壺
「車よりおちぬべうまろび給(たま)へば」
[訳] 牛車(ぎつしや)から落ちてしまいそうにお倒れになるので。
②
(花や葉が)散る。(雨や雪が)降る。
出典徒然草 一五五
「木(こ)の葉のおつるも」
[訳] 木の葉が散るのも。
③
光がさす。照らす。
出典新古今集 冬
「霜の上におちたる月の影の寒けさ」
[訳] 霜の上にさしている月の光の寒い感じよ。
④
(日や月が)沈む。没する。
出典蕪村句集 俳諧
「おつる日のくくりて染むる蕎麦(そば)の茎(くき)―蕪村」
[訳] 沈む夕日がくくり染めで染めているのだ。あの蕎麦の茎が真っ赤なのは。
⑤
落ちぶれる。堕落する。
出典源氏物語 蓬生
「かうまでおつべき宿世(すくせ)ありければにや」
[訳] こうまで落ちぶれるはずの宿命があったからだろうか。
⑥
逃げる。逃げ落ちる。
出典平家物語 四・信連
「高倉を北へおちさせ給(たま)ふに」
[訳] 高倉通りを北へお逃げになられたが。
⑦
治る。(つきものが)去る。
出典十訓抄 一〇
「おこり時過ぎておちにける」
[訳] 熱病が、時間が経過して治った。
⑧
〔多く下に打消の「ず」を伴って〕欠ける。欠かす。
出典万葉集 六
「寝(ぬ)る夜おちず家なる妹(いも)をかけて偲(しの)ひつ」
[訳] 寝る夜は欠かさず、家にいる妻を心に思い浮かべて慕ったことだ。
⑨
白状する。
出典今昔物語集 二四・一四
「あながちに問ひければ、つひにおちていはく」
[訳] きつく問いただしたところ、とうとう白状して言うことには。
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