学研全訳古語辞典 |
とぶら・ふ 【訪ふ】
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①
尋ねる。問う。
出典古今集 秋上
「秋の野に人まつ虫の声すなり我かと行きていざとぶらはむ」
[訳] 秋の野に人を待つ松虫の声がするのが聞こえる。私を待っているのかと、出かけて行って、さあ、尋ねてみよう。
②
訪れる。訪ねる。訪問する。
出典奥の細道 大垣
「そのほか親しき人々、日夜とぶらひて、蘇生(そせい)の者に会ふがごとく、かつ喜びかついたはる」
[訳] そのほか親しい人々が、夜も昼も訪ねてきて、生き返った人に会うように、一方では(私の無事を)喜び、一方ではねぎらってくれる。
③
慰問する。見舞う。
出典竹取物語 竜の頸の玉
「国の司(つかさ)まうでとぶらふにも、え起き上がり給(たま)はで」
[訳] (大納言を)国司が参上して見舞っても、起き上がることがおできにならないで。
④
探し求める。
出典平家物語 一・祇園精舎
「遠く異朝をとぶらへば」
[訳] 遠く外国の例を探し求めると。
⑤
追善供養する。冥福(めいふく)を祈る。
出典平家物語 五・福原院宣
「その後世(ごせ)をとぶらはんために」
[訳] その死後の冥福を祈るために。◇「弔ふ」とも書く。
とむら・ふ 【訪ふ・弔ふ】
「とぶらふ」に同じ。◆「とぶらふ」の変化した語。
と・ふ 【問ふ・訪ふ】
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①
尋ねる。問う。
出典伊勢物語 九
「渡し守にとひければ」
[訳] 渡し舟の船頭に尋ねたところ。
②
調べる。詰問する。
出典平家物語 四・南都牒状
「その罪をとふべしといへども」
[訳] その罪を詰問しなければならないというが。
③
訪れる。訪問する。見舞う。
出典古今集 秋下
「秋は来(き)ぬ紅葉(もみぢ)は宿に降りしきぬ道踏み分けてとふ人はなし」
[訳] 秋が来た。紅葉は庭にいっぱい散ってしまった。しかし、その道を踏み分けて私を訪れる人は一人もいない。
④
弔問する。弔う。
出典徒然草 三〇
「跡とふわざも絶えぬれば」
[訳] 死者の霊を弔う法事もしなくなってしまうと。
おと-な・ふ 【音なふ・訪ふ】
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①
音がする。音をたてる。
出典徒然草 一一
「木の葉にうづもるる懸樋(かけひ)の雫(しづく)ならでは、つゆおとなふものなし」
[訳] 木の葉にうずもれている、懸け樋の雫以外には、まったく音をたてるものはない。(この例は、
②
の意味も掛けている。)②訪問する。訪れる。訪ねる。
出典源氏物語 末摘花
「古(ふ)りにたるあたりとておとなひ聞こゆる人もなかりけるを」
[訳] 時代に取り残された所だというので、お訪ね申し上げる人もなかったので。
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