学研全訳古語辞典 |
かえす 【返す】
⇒かへす
かへ・す 【返す】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
①
帰らせる。戻らせる。
出典万葉集 一〇二一
「つつみ無く病あらせず急(すむや)けくかへし給(たま)はね本の国辺(くにへ)に」
[訳] 無事に病気にもならず、すぐに帰らせてください、元の大和の国に。◇「帰す」とも書く。
②
戻す。返却する。返上する。
出典沙石集 九
「主を尋ねて、かへし給(たま)へ」
[訳] 持ち主を捜して、返却しなさい。
③
返歌をする。返事をする。
出典竹取物語 火鼠の皮衣
「かの詠み給(たま)ひける歌の返し、箱に入れてかへす」
[訳] あの(あべの右大臣が)お詠みになった歌の返歌を、箱に入れて返す。
④
吐き戻す。
出典栄花物語 楚王の夢
「御湯参らせ給(たま)へば、かへして聞こし召さず」
[訳] お湯をお飲ませなさったところ、吐き戻してお飲みになれない。
⑤
染め返す。
出典平家物語 九・一二之懸
「小桜を黄にかへいたる鎧(よろひ)着て」
[訳] 小桜(の花を染めた革)を黄色に染め返した鎧を着て。◇「かへい」はイ音便。
⑥
繰り返す。もう一度…する。
出典蜻蛉日記 中
「『散るか、かつは時』といふことを、かへしおぼえつつ、いと悲し」
[訳] 「花も散るか、思えばその時節よ」という言葉を繰り返し思い出しては、たいそう悲しい。
⑦
裏返す。ひっくり返す。
出典古今集 恋二
「いとせめて恋しきときはむばたまの(=枕詞(まくらことば))夜の衣をかへしてぞ着る」
[訳] とても切実に恋しいときは(夢であの人に会えるように)寝巻きを裏返して着(て寝)ることだ。◇「反す」とも書く。
⑧
すき返す。耕す。
出典平家物語 二・大納言死去
「しづが山田をかへさねば、米穀の類もなく」
[訳] いやしい農夫が山の田を耕さないので、米穀の類もなく。
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