学研全訳古語辞典 |
かつしかの…
分類和歌
「勝鹿の真間(まま)の井を見れば立ち平(なら)し水汲(く)ましけむ手児名(てごな)し思ほゆ」
出典万葉集 一八〇八・高橋虫麻呂(たかはしのむしまろ)
[訳] 葛飾の真間の井の清水(わき水)を見ると、昔、この辺を踏みしめながら行き来し、水を汲んだであろう、手児名のことが思われることだ。
鑑賞
「真間の手児名」は、上代、下総(しもうさ)の国葛飾(かつしか)郡真間(今の千葉県市川市真間町)に住んだという伝説上の娘。「手児名」は少女をあらわす上代の東国方言。その美しさに魅せられた多くの男性からの求婚を受け、苦悩のあげくに、入水(じゆすい)して自ら命を断ったという。この作は、その手児名を歌った長歌に対する反歌。伝説歌人として名高い作者が、伝承された美しい娘にまつわる悲劇を追想し、情感豊かに歌い上げている。
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