学研全訳古語辞典 |
いとどしく…
分類和歌
「いとどしく虫の音(ね)しげき浅茅生(あさぢふ)に露おきそふる雲の上人(うへびと)」
出典源氏物語 桐壺
[訳] 虫の音がしきりに聞こえる草深い荒れはてた家に、(ただでさえ悲しみの涙にくれているのに)いっそう涙の露を置き加える、宮中からの使いの方よ。
鑑賞
桐壺更衣(きりつぼのこうい)が亡くなり悲嘆にくれる母親のもとへ、帝(みかど)は「靫負(ゆげひ)の命婦(みやうぶ)」を見舞いに遣わした。命婦が退出する折に詠んだ「鈴虫の声の限りを…」〈⇒すずむしの…。〉に対して、母親が別れのあいさつとして詠んだ歌。「いとどしく」は「露おきそふる」にかかる。「音」は「虫の音」と「泣く音」をかけている。「雲の上人」は宮中に仕える人を指す。ここでは、靫負の命婦のこと。
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