学研全訳古語辞典 |
から
《接続》
①
②
が活用語の連体形に、
③
は接続助詞「て」に付く。①〔原因・理由〕…のために。…ので。
出典浮世風呂 滑稽
「鶴(つう)は利口者だから泣きませぬ」
[訳] 鶴は賢い者なので泣きません。②〔判断の根拠を強調〕…からには。…以上は。▽「からは」の形で。
出典阿弥陀が池 浄瑠・近松
「見付けられたからは、ありやうに言はう」
[訳] 見つけられたからには、ありのままに言おう。③〔逆接の仮定条件〕…ても。…たところで。▽「てから」「てからが」の形で。
出典心中重井筒 浄瑠・近松
「来てから今夜は出されませぬ」
[訳] 来たところで、今夜は出すことはできません。
参考
助詞「から」に接続助詞の用法が生まれたのは、中世末期以降である。
から
《接続》体言および活用語の連体形に付く。
①
〔動作・作用の起点〕…から。
出典古今集 物名
「浪(なみ)の花沖から咲きて散り来(く)めり」
[訳] 波の花が沖の方から咲いて(岸の方に)散って来るようだ。
②
〔動作・作用の経由点〕…を通って。…に沿って。
出典万葉集 二六一八
「月夜(つくよ)良み妹(いも)に逢(あ)はむと直道(ただち)から我は来つれど夜そ更けにける」
[訳] 月がすばらしいので、あなたに会おうと、近道を通って私は来たけれど、夜が更けてしまった。
③
〔原因・理由〕…によって。…のために。
出典古今集 恋三
「長しとも思ひぞはてぬ昔よりあふひとからの秋の夜なれば」
[訳] (秋の夜が)一概に長いとも思いきれない。昔から会う人によって短くも長くもなる秋の夜だから。
④
〔手段・方法〕…で。
出典落窪物語 一
「徒歩(かち)からまかりて」
[訳] 徒歩で参りまして。
⑤
〔引き続き、すぐ次の事態が起こることを表す〕…とすぐに。…そばから。
出典古今集 離別
「惜しむから恋しきものを」
[訳] (別れを)惜しむそばから恋しいのに。
参考
中古には「より」が、中世後期以降は「から」が多用された。
から 【柄・故】
ゆえ。ため。▽原因・理由を表す。
出典万葉集 三七九九
「己(おの)が身のから人の子の言(こと)も尽くさじ」
[訳] 自身のために、人なみにあれこれ言いはしますまい。◆上代語。
-から 【柄】
名詞に付いて、そのものの本来持っている性質の意を表す。「国から」「山から」
参考
後に「がら」とも。現在でも「家柄」「続柄(つづきがら)」「身柄」「時節柄」「場所柄」などと用いる。
から 【殻・骸】
①
なきがら。▽魂の抜け去った後に残る肉体。
出典源氏物語 夕顔
「ただ今のからを見では」
[訳] 現在のなきがらを見ないでは。
②
(虫などの)ぬけがら。
③
殻。外皮。
から 【韓・唐】
朝鮮。中国。外国。
出典徒然草 一〇
「からの、大和の、めづらしく、えならぬ調度ども並べ置き」
[訳] 中国のや、わが国の、珍しくてなんとも言えず立派な道具類を並べ置いて。
参考
(1)古代朝鮮半島の西南端にあった「伽羅(から)」国を朝鮮の総称として用いたことに始まる。奈良時代には朝鮮を表したが、平安時代以降は、主に中国を表すようになった。(2)接頭語的に名詞に付き、外国から渡来したとか、外国風のという意味で用い、高級で貴重なものという語感を伴って使われた。
からのページへのリンク |