学研全訳古語辞典 |
ふ
《接続》四段動詞の未然形に付く。
①
〔反復〕繰り返し…する。何度も…する。
出典万葉集 八九二
「糟湯酒(かすゆざけ)うちすすろひてしはぶかひ」
[訳] ⇒かぜまじり…。
②
〔継続〕…し続ける。ずっと…している。
出典万葉集 一八
「三輪山(みわやま)をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや」
[訳] ⇒みわやまを…。◆上代語。
語法
上に付く動詞の音変化 「ふ」が付くと、「ふ」の上のア段の音(おん)がオ段の音に変化することがある。①の用例の「すすろふ」は「すすらふ」の「ら」が変化したもので、一般に一語として扱われる。類例は「つづしろふ」「うつろふ」などがある。
語の歴史
この「ふ」が助動詞として用いられたのは上代であり、中古になると「語らふ」「住まふ」「慣らふ」「願ふ」「交じらふ」「守らふ」「呼ばふ」など、特定の動詞の活用語尾に残るだけとなり、接尾語化した。したがって、中古以降は一語の動詞の一部分。
-ふ
助動詞「ふ」が接尾語化したもの。主として四段活用の動詞の未然形に付いて、反復継続を表す。⇒ふ(助動詞)
ふ 【傅】
律令制で「東宮坊(とうぐうばう)」の役人。皇太子を補導する役で、多く大臣が兼任した。◆「傅」のもとの意は「かしずく」「つきそう」。
ふ 【封】
与えられた領地。
ふ 【干・乾】
活用{ひ/ひ/ふ/ふる/ふれ/ひよ}
①
かわく。
出典万葉集 七九八
「わが泣く涙いまだひなくに」
[訳] 私の泣く涙はまだかわかないのに。
②
(潮が)引く。
出典万葉集 三七一〇
「潮ひなばまたもわれ来(こ)む」
[訳] 潮が引いたならば、また私はやって来よう。◆上代語。中古以後は「ひる」と上一段化。
ふ 【府】
①
役所。「近衛(このゑ)府」「国(こく)府」など。
②
国府の役所の所在地。
③
江戸のこと。▽江戸時代、幕府があることから。「在ふ」
ふ 【生】
(草木が)繁茂している場所。(草木が)一面にある場所。「浅茅(あさぢ)ふ」「蓬(よもぎ)ふ」。
参考
接尾語的に用いる例が多く、平安時代中期以後は「ウ」と発音された例も多い。
ふ 【符】
①
上級官庁から所管の役所に伝える公文書。
②
守り札。護符。
ふ 【経】
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
①
時がたつ。年月が過ぎる。過ぎ去る。
出典伊勢物語 八三
「日ごろへて、宮に帰り給(たま)うけり」
[訳] 数日たって、京の御殿にお帰りになった。
②
通る。通って行く。通り過ぎる。
出典土佐日記 二・一
「黒崎の松原をへて行く」
[訳] 黒崎の松原を通り過ぎて行く。
ふ 【綜】
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
縦糸を引き伸ばして織機にかける。
出典古今集 物名
「ささがにの花にも葉にも糸をみなへし」
[訳] 蜘蛛(くも)が花にも葉にも一面に糸をかけた。
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