学研全訳古語辞典 |
ふ-と
①
さっと。すばやく。
出典枕草子 五月ばかりなどに
「急ぎてとらへて折らむとするほどに、ふと過ぎて外れたるこそ、いとくちをしけれ」
[訳] (牛車(ぎつしや)の屋形に入って来た枝を)急いでつかんで折ろうとするときに、すばやく過ぎて(牛車から)外れてしまうのは、とても残念だ。
②
不意に。思いがけず。急に。
出典宇治拾遺 五・一〇
「この僧の鼻より、氷魚(ひを)の一つ、ふと出(い)でたりければ」
[訳] この僧の鼻から、氷魚(=鮎(あゆ)の稚魚)が一匹、不意に飛び出したので。
③
たやすく。簡単に。
出典竹取物語 竜の頸の玉
「わが弓の力は、竜(たつ)あらばふと射殺して」
[訳] 私の弓の威力は、もし竜がいるならばたやすく射殺して。
ふと- 【太】
「りっぱな」「壮大な」「神聖な」などの意を表す。天皇や神道にかかわる儀礼などに関する名詞・動詞に付ける。「ふと襷(たすき)」「ふと祝詞(のりと)・(のりとごと)」「ふと敷く」「ふと知る」
ふと 【浮屠・浮図】
①
仏陀(ぶつだ)。仏(ほとけ)。
②
僧。
出典野ざらし 俳文・芭蕉
「もとどりなき者はふとの属にたぐへて」
[訳] 髪を束ねていない者は僧侶の仲間だとして。
③
仏塔。
出典今昔物語集 九・三〇
「わがためにふとを造れと言ひき」
[訳] 私のために仏塔を造れと言った。◆「ふど」「ぶど」とも。仏教語。
ふとのページへのリンク |