学研全訳古語辞典 |
やう-なり
《接続》活用語の連体形や、「名詞+の」「名詞+が」などに付く。
①
〔比況〕まるで…である。…みたいである。…のようだ。▽比喩(ひゆ)を表す。
出典源氏物語 若紫
「髪は、扇(あふぎ)をひろげたるやうに、ゆらゆらとして」
[訳] (少女)の髪は、扇を広げたように、ゆらゆらとして。
②
〔例示〕(たとえば)…のようだ。…のようだ。
出典枕草子 鳥は
「雀(すずめ)などのやうに常にある鳥ならば」
[訳] (うぐいすが)たとえばすずめなどのように、いつもいる鳥ならば。
③
〔状態〕…の状態にある。…のようすである。
出典源氏物語 桐壺
「おのづから御心うつろひて、こよなく思(おぼ)し慰むるやうなるも」
[訳] 自然に(帝(みかど)の)お心は(藤壺(ふじつぼ)へ)移って、この上もなくお気持ちが慰められるようすであるのも。
④
〔願望・意図〕…ように。▽「…やうに」の形で用いて。
出典徒然草 一四二
「世の人の飢ゑず、寒からぬやうに、世をば行はまほしきなり」
[訳] 世の中の人が飢えることなく、寒い思いをしないように、世を治めてほしいものである。
⑤
〔不確かな断定・婉曲(えんきよく)〕…ようだ。
出典徒然草 六八
「筑紫(つくし)に、なにがしの押領使(あふりやうし)などいふやうなる者のありけるが」
[訳] 筑紫の国に、だれそれという押領使などというような者がいたが。
語法
(1)中古には、同じ比況の助動詞でも、漢文訓読調の文には「ごとし」が用いられ、「やうなり」は和文系の文章に用いられた。(2)名詞「やう」の意味が残っているような場合には、名詞「やう」+助動詞「なり」として扱うこともできる。
参考
名詞「やう(様)」に断定の助動詞「なり」が付いて一語化したもの。
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