学研全訳古語辞典 |
やがて 【軈て・頓て】
①
そのまま。引き続いて。
出典徒然草 七三
「言ひたきままに語りなして、筆にも書きとどめぬれば、やがて定まりぬ」
[訳] 言いたい放題にとりつくろって巧みに語って、それを、文章にも書き付けてしまうと、そのまま(事実として)定着してしまう。
②
すぐに。ただちに。
出典徒然草 七一
「名を聞くより、やがて面影は推しはからるる心地するを」
[訳] 名前を聞くやいなや、すぐに(その人の)顔つきは見当をつけられるような気がするが。
③
ほかでもなく。とりもなおさず。
出典枕草子 宮の五節いださせ給ふに
「いま二人は女院・淑景舎(しげいさ)の人、やがてはらからどちなり」
[訳] あとの二人は女院の女房と淑景舎の女房で、これはほかでもなく姉妹である。
④
そっくり。そのまま全部。
出典枕草子 牛は
「牛は、…腹の下、足、尾の筋などは、やがて白き」
[訳] 牛は、…腹の下、足、尾の毛筋などは、そっくり白い(のがよい)。
⑤
まもなく。そのうち。いずれ。
出典奥の細道 那須
「やがて人里に至れば、値(あたひ)鞍壺(くらつぼ)に結び付けて馬を返しぬ」
[訳] まもなく村里に着いたので、馬の借り賃を鞍壺に結びつけて馬を返した。
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