学研全訳古語辞典 |
やまとには…
分類和歌
「大和には群山(むらやま)あれどとりよろふ天(あま)の香具山(かぐやま)登り立ち国見(くにみ)をすれば国原(くにはら)は煙(けぶり)立ち立つ海原(うなはら)は鷗(かまめ)立ち立つうまし国そあきづ島(=枕詞(まくらことば))大和の国は」
出典万葉集 二・舒明天皇(じよめいてんわう)
[訳] 大和には多くの山々はあるが、その中でもとりわけ立派に整っている天の香具山よ、その山に登り立って国見をすると、国の広々とした平地には、炊煙があちこちに立ち上がっている。池の面には、かもめがあちこち飛び交っている。ほんとうによい国であるよ。この大和の国は。
鑑賞
舒明(じよめい)天皇は、天智(てんじ)・天武両帝の父。「国見」とは、見晴らしのよいところに立って国のようす、人々の生活ぶりをながめること。穏やかで平和な大和平野の、生気に満ちたようすを描くことによって、国土の繁栄を願う、いかにも古代の大君らしい大らかな詠みぶりである。「煙」は人家の炊事の煙。「海原」は香具山近くの埴安(はにやす)、磐余(いわれ)などの池を海としてとらえたもの。「あきづ島」は、秋津島、蜻蛉島とも書き、日本の国の古名。
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