学研全訳古語辞典 |
まいる 【参る】
⇒まゐる
まゐ・る 【参る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
参上する。うかがう。お仕えする。▽「行く」の謙譲語。
出典枕草子 宮にはじめてまゐりたるころ
「宮に初めてまゐりたるころ」
[訳] 中宮様の御殿にはじめてお仕えしたころ。
②
(神社・寺院などに)お参りに行く。お参りする。参詣(さんけい)する。▽「行く」の謙譲語。
出典更級日記 春秋のさだめ
「霜月(しもつき)の二十余日、石山にまゐる」
[訳] 十一月の二十日過ぎに、石山寺にお参りに行く。
③
(天皇・皇太子の妃(きさき)として)おそばに上る。入内(じゆだい)する。▽「行く」の謙譲語。
出典源氏物語 桐壺
「人より先にまゐり給(たま)ひて、やむごとなき御思ひなべてならず」
[訳] (この妃は)ほかの妃よりも先に入内なさって、帝(みかど)がお心をおかけになることはひととおりでなくて。
④
参ります。▽「行く」「来(く)」の丁寧語。
出典更級日記 物語
「今、まゐりつる道に、紅葉(もみぢ)のいとおもしろきところのありつる」
[訳] 今、通って参りました道に、紅葉のたいへん美しい所がありましたよ。
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
差し上げる。献上する。奉る。▽「与ふ」の謙譲語。
出典伊勢物語 八二
「親王(みこ)に、馬の頭(かみ)、大御酒(おほみき)まゐる」
[訳] 親王に、右馬寮(うめりよう)の長官がお酒を差し上げる。
②
してさしあげる。奉仕する。▽「す」「仕ふ」の謙譲語。
出典源氏物語 若紫
「加持(かぢ)などまゐるほどに、日高くさし上りぬ」
[訳] 加持などをしてさしあげるうちに、太陽が高くのぼった。
③
召し上がる。お食べになる。お飲みになる。▽「食ふ」「飲む」の尊敬語。
出典大和物語 一二五
「ほかにて酒などまゐり、酔(ゑ)ひて」
[訳] よそで酒などをお飲みになり、酔っぱらって。
④
なさる。おやりになる。▽「す」の尊敬語。
出典源氏物語 若紫
「今宵(こよひ)はなほ静かに加持(かぢ)などまゐりて」
[訳] 今晩はやはり静かに加持などをなさって。
参考
(1)[一]①の「参る」の対義語は、「まかる」であったが、中古になると「まかづ」になった。(2)[二]③の用法は、[二]①②に対して、その奉仕を受ける側の行為・動作をいうのに用いたところから生まれたものである。
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