学研全訳古語辞典 |
よ・る 【寄る・依る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
近づく。近寄る。接近する。
出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「あやしがりてよりて見るに、筒の中光りたり」
[訳] 不思議に思って近づいて見ると、(竹の)筒の中が光っている。
②
寄り集まる。寄り合う。
出典万葉集 四二一七
「卯(う)の花を腐(くた)す長雨(ながめ)の水(みづ)はなによる木(こ)つみなすよらむ児(こ)もがも」
[訳] 卯の花を腐らせる長雨の流れの先頭に寄り集まる木屑(きくず)のように私のところに寄り集まる子供がほしいなあ。
③
立ち寄る。訪問する。
出典竹取物語 蓬莱の玉の枝
「我が御家にもより給(たま)はずしておはしたり」
[訳] ご自分のお屋敷にも立ち寄りなさらないで(かぐや姫の家に)おいでになった。
④
頼る。頼りにする。すがる。
出典古今集 雑体
「伊勢(いせ)の海人(あま)も舟流したる心地してよらむ方(かた)なく」
[訳] (七条の后(きさき)がなくなって)伊勢の漁師(=自分)も波に舟をさらわれたような気持ちになって、頼りにするようなところもなく。
⑤
もたれかかる。寄りかかる。
出典源氏物語 帚木
「『あなかま』とて、脇息(けふそく)によりおはす」
[訳] 「ああ、やかましい」といって、脇息にもたれかかっていらっしゃる。
⑥
(神霊・物の怪(け)などが)のり移る。とりつく。
出典今昔物語集 三一・七
「いくばくもなく病付きて、日ごろ経てつひに失(う)せにけり。その女のよりたるにやとぞ」
[訳] まもなく病気になって、数日たってとうとう死んでしまった。その女(の霊)がのり移ったのであろうかと(評判になった)。
⑦
(心が)寄る。傾く。
出典万葉集 三二六七
「うち靡(なび)き心は妹(いも)によりにけるかも」
[訳] (玉藻(たまも)が)なびくように、私の心はあなたに傾き寄ってしまったよ。
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