学研全訳古語辞典 |
あ 【彼】
あれ。あちら。あの人。▽遠称の指示代名詞。
出典更級日記 竹芝寺
「あの男(をのこ)、こち寄れ」
[訳] あちらの男よ、こちらへ寄りなさい。
あれ 【彼】
①
あれ。
出典枕草子 人ばへするもの
「あれ見せよ。やや、はは」
[訳] あれを見せてよ。ねえ、お母さん。
②
それ。そこ。▽話し手にとって確認できない正体不明な物・人や、高貴な人をさすことが多い。
出典平家物語 九・敦盛最期
「あれは大将軍とこそ見まゐらせ候へ」
[訳] それは大将軍であると拝見いたします。
③
あなた。
出典平家物語 六・慈心房
「『あれはいづくよりの人ぞ』と問ひければ」
[訳] 「あなたはどちらからの人ですか」と尋ねたところ。
か 【彼】
あれ。あちら。▽遠称の指示代名詞。「かの」などの形で。
出典徒然草 一〇
「かのためし思ひいでられ侍(はべ)りしに」
[訳] あの例が自然と思い出されましたところ。
〔多く「か…かく…」の形で〕ああ。あのように。
出典万葉集 一三一
「波のむたか寄りかく寄る玉藻なす寄り寝し妹(いも)を」
[訳] ⇒いはみのうみ…。
かれ 【彼】
①
あれ。あのもの。▽遠称の指示代名詞。
出典伊勢物語 六
「『かれは何ぞ』となむ男に問ひける」
[訳] 「あれはなんだ」と男にたずねた。
②
あの人。その者。▽他称の人称代名詞。
出典源氏物語 桐壺
「かれは…御志あやにくなりしぞかし」
[訳] あの人(=桐壺更衣(きりつぼのこうい))は…(帝(みかど)の)ご愛情が大変深かったのであったよ。
注意
(1)古文では現代語にない①の用法で用いられることが多い。(2)②は現代語「彼」に近い用法だが、古文では女に対しても用いる。
彼のページへのリンク |