学研全訳古語辞典 |
こひわびて…
分類和歌
「恋ひわびて泣く音(ね)にまがふ浦波(うらなみ)は思ふかたより風や吹くらむ」
出典源氏物語 須磨
[訳] 恋しさに悲しみ嘆いて泣く声にも似る海辺の波音は、私が恋しく思う方角から風が吹くためにそう聞こえるのだろうか。
鑑賞
都から退去して須磨(すま)に謹慎する源氏が秋の夜半、眠れぬままに詠んだ歌。初めて耳にする波音や風の激しさに、ひとしおわが身の心細さを感じたのだった。「泣く」の主語は、源氏、または彼を慕う都の人々とする両説があり、「思ふかた(=都)」より風が吹いてくるから私が泣くと、都で泣く人々の声を風が運んでくるとの二通りに解釈できる。「らむ」は原因の推量を表す。
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