学研全訳古語辞典 |
なに-の 【何の】
分類連語
①
〔「の」が主格の場合〕何が。だれが。
出典枕草子 職の御曹司におはします頃、西の廂にて
「なにの言ふにかあらむ」
[訳] だれが言うのであろうか。
②
〔「の」が連体格の場合〕
(ア)
なになにの。なにがしの。
出典源氏物語 少女
「なにの親王(みこ)、くれの源氏など」
[訳] なになにの親王、だれそれの源氏など。
(イ)
なんという。どんな。
出典枕草子 五月ばかり、月もなう
「さることには、なにの答(いら)へをかせむ」
[訳] そのようなことにはなんという返事をしようか。
(ウ)
〔下に打消の語を伴って〕どれほどの。少しの。
出典源氏物語 若紫
「さらになにのしるしも侍(はべ)らじものを」
[訳] 決してどれほどの効果もないのになあ。
なりたち
代名詞「なに」+格助詞「の」
①
何で。どうして。▽疑問・反語の意を表す。
出典源氏物語 手習
「なにのさる人をか、この院の内に捨て侍(はべ)らむ」
[訳] 何でそのような人を、この院の中に捨てましょうか、いや、そんなことはしません。
②
いや、むしろ。かえって。
出典伊勢物語 六五
「さればなにのよきことと思ひて」
[訳] それならばかえって好都合なことだと思って。
なん-の 【何の】
どういう。どんな。
出典笈の小文 俳文・芭蕉
「なんの木の花とも知らず」
[訳] どういう木の花とも知らない。
①
どうして(…か、いや、…ない)。▽反語表現に用いる。
出典心中天網島 浄瑠・近松
「あの不心中者(ぶしんぢゆうもの)、なんの死なう」
[訳] あの不誠実なやつが、どうして死ぬだろうか、いや、死にはしない。
②
なんだ。どうということはない。
出典浮世床 滑稽
「なんの、こんな頭の一つや二つ」
[訳] どうということはない、こんな頭の一つや二つ。
③
「何の彼(か)の」の略。なんだのかんだの。
出典心中刃は氷 浄瑠・近松
「引き日のなんのと」
[訳] 引き日(=遊女が自分で金を出して休む日)だのなんだのかんだのと。◆「なにの」の変化した語。
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