学研全訳古語辞典 |
なに-と-な・し 【何と無し】
分類連語
①
これということもない。
出典平家物語 七・忠度都落
「事の体(てい)なにとなう哀れなり」
[訳] その場のありさまはこれということもなくしみじみとしていた。◇「なにとなう」はウ音便。
②
特にどうということもない。
出典徒然草 二九
「長き夜のすさびに、なにとなき具足とりしたため」
[訳] 長い夜の慰みごとに、特にどうということもない身のまわりの道具をきちんと整理し。
③
すべてにわたっている。
出典源氏物語 紅葉賀
「御前の前栽(せんざい)の、なにとなく青みわたれる中に」
[訳] 御前の植え込みが、すべてにわたって青くひろがっている中に。
④
なんとなく。
出典枕草子 四月、祭の頃
「霧も霞(かすみ)も隔てぬ空のけしきの、なにとなくすずろにをかしきに」
[訳] 霧にも霞にも隔てられない(きれいな)空のようすがなんとなくむやみに興趣深いが。
なりたち
代名詞「なに」+格助詞「と」+形容詞「なし」
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