学研全訳古語辞典 |
き-し-かた 【来し方】
分類連語
①
過ぎ去った時。過去。
出典源氏物語 夕顔
「きしかたの事なども人知れず思ひ出(い)でけり」
[訳] 過去のことなどをそっと思い出した。
②
通り過ぎて来た場所・方角。
出典蜻蛉日記 中
「きしかたを見やれば、…船どもを岸に並べ寄せつつあるぞ」
[訳] 通り過ぎて来た方を眺めやると、…多くの船をずらっと岸に寄せて並べてあるのは。[反対語] 行(ゆ)く末(すゑ)。⇒こしかた
参考
なりたち
カ変動詞「く(来)」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形+名詞「かた」
こ-し-かた 【来し方】
分類連語
①
通り過ぎて来た方向。通って来た場所。
出典源氏物語 須磨
「うちかへり見給(たま)へるに、こしかたの山はかすみ、はるかにて」
[訳] (源氏が)振り返ってご覧になっていると、通り過ぎて来た方角の山はかすんで、はるか遠くで。
②
過ぎ去った時。過去。
出典新古今集 雑下
「こしかたをさながら夢になしつればさむる現(うつつ)のなきぞかなしき」
[訳] 過ぎ去った時をそのまま夢にしてしまったので、夢から覚める現実がないことが悲しいことだ。
参考
過去の助動詞「き」の連体形「し」が、カ変動詞に付くときは、未然形「こ」、または、連用形「き」に付く。従って、「きしかた」の例もある。「こしかた」「きしかた」の関係では、中古、「きしかた」の方が優勢で、特に②の過去の意を表すのに多く用いた。中古末期以降になると、逆に「こしかた」の方が圧倒的に多くなり、「きしかた」は衰えた。
なりたち
カ変動詞「来(く)」の未然形+過去の助動詞「き」の連体形+名詞「かた」
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