学研全訳古語辞典 |
こ 【来】
動詞「来(く)」の命令形。
出典更級日記 大納言殿の姫君
「いづら、猫は。こちゐてこ」
[訳] どうしたの、猫は。こちらへ連れておいで。
注意
「来(く)」の命令形は、古くは「こ」。中古末期ごろからは呼び掛けの間投助詞が付いて一語化した「こよ」が多く用いられた。
こ 【来】
⇒いまこむと…。
く 【来】
{*語幹・活用語尾が同一}
①
来る。
出典万葉集 四二四三
「行くともくとも船は早けむ」
[訳] 行くとしても来るとしても船は速いことだろう。
②
行く。▽目的地に自分が居るという気持ちで。
出典伊勢物語 二三
「かの女、大和(やまと)の方(かた)を見やりて、『…』と言ひて見出(みい)だすに、からうじて、大和人、『こむ』と言へり」
[訳] その女は、大和の方角を見ながら、「…」と歌を詠んで外を見ると、やっとのことで、大和の男から「(そちらへ)行こう」と言ったきた。
③
おとずれる。
出典古今集 秋上
「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」
[訳] ⇒あききぬと…。
活用{こ/き/く/くる/くれ/こ(こよ)}
〔動詞の連用形に付いて〕以前からずっと…する。…てくる。
出典万葉集 三六三七
「幾代経(ふ)るまで斎(いは)ひきにけむ」
[訳] (この島は旅人を)長い年月を経た今までずっと大切に守ってきたのだろう。
参考
命令形は、中古までは「こ」が普通。中世以降「こよ」が多くなる。
き 【来】
動詞「来(く)」の連用形。
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