学研全訳古語辞典 |
さ-た 【沙汰】
①
協議。評議。裁定。訴訟。さばき。
出典徒然草 一七七
「雨降りてのち、いまだ庭の乾かざりければ、いかがせんとさたありけるに」
[訳] 雨が降ってその後、まだ庭が乾かなかったので、(蹴鞠(けまり)を)どうしようかと評議があったときに。
②
処置。始末。
出典徒然草 五九
「同じくは、かのことさたしおきて」
[訳] どうせ同じことなら、あのことを処置しておいて(から出家しよう)。
③
指図。命令。仰せ。
出典平家物語 一・殿上闇討
「かへって叡感(えいかん)にあづかっしうへは、あへて罪科(ざいくわ)のさたもなかりけり」
[訳] かえって(上皇の)おほめをいただいた以上は、まったく処罰の命令もなかった。
④
知らせ。音信。報告。
出典平家物語 四・競
「『さらんには力なし』とて、その後(のち)さたもなかりしを」
[訳] 「そういうことならやむを得ない」と言って、その後音信もなかったのだが。
⑤
うわさ。評判。
出典日本永代蔵 浮世・西鶴
「二間口(にけんぐち)の棚借りにて千貫目持ち、都のさたになりしに」
[訳] (男は)二間間口(にけんまぐち)の店を借りる身で千貫目持ち(の長者)ということで、都の評判になっていたが。
⑥
手配。支度。準備。
出典平家物語 六・小督
「これまた綸言(りんげん)なれば、雑色(ざふしき)・牛・車きよげにさたして」
[訳] これもまた天皇のおことばなので、下働きの従者や牛や車を立派に支度して。
参考
本来の意味は、砂の中から砂金や米などを水ですすいで選び分けること、淘汰(とうた)の意。それが変化して、事の善悪・理非を協議、判定すること。またそれに伴う処置、指図をもいう。
沙汰のページへのリンク |