学研全訳古語辞典 |
さ-て 【然て】
そのままで。そういう状態で。
出典徒然草 八二
「し残したるを、さてうち置きたるは、おもしろく、生き延ぶるわざなり」
[訳] やり残してあることを、そのままでおいておくのは、趣があって、寿命が延びていくやり方である。
①
そうして。それで。そこで。▽前の内容を受けて、さらに次の話題に話を展開させる。
出典徒然草 五二
「極楽寺・高良(かうら)などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。さて、かたへの人に会ひて」
[訳] (末寺や末社の)極楽寺や高良神社などを拝んで、(石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)は)これだけと思いこんで帰ってしまった。そうして、仲間の僧に会って。
②
ところで。さて。▽それまでの話とはかかわりのない別の話を新たに言い起こす。
出典土佐日記 二・一六
「さて、池めいてくぼまり、水漬(つ)ける所あり」
[訳] ところで、(この家の庭には)池のようにくぼみ、水につかっている所がある。
③
そうはいうものの。ところが。▽前の内容から逆接的に言いはじめる。
出典枕草子 うれしきもの
「うれしきもの。まだ見ぬ物語の一を見て、いみじうゆかしとのみ思ふが、残り見出(い)でたる。さて、心劣りするやうもありかし」
[訳] うれしいもの。まだ読んだことのない物語の第一巻を読んで、(その続きを)とても読みたいとばかり思っている、その残り(の巻)を見つけ出したとき。そうはいうものの、がっかりするようなこともあるよ。
参考
副詞「さ」に接続助詞「て」が付いて一語化したもの。
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