学研全訳古語辞典 |
あ・く 【飽く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
十分に満足する。満ち足りる。
出典宇治拾遺 一・一八
「あはれ、いかで芋粥(いもがゆ)にあかん」
[訳] ああ、何とかして、芋粥に十分に満足したい。
②
いやになる。飽きる。
出典古今集 雑下
「世の中の憂(う)けくにあきぬ奥山の木の葉に降れる雪や消(け)なまし」
[訳] この世のつらさにいやになった。奥山の木の葉に降り積もった雪が消えるように、私も奥山に入ってこの世から姿を隠してしまおうか。
活用{か/き/く/く/け/け}
〔動詞の連用形に付いて〕十分に…する。
出典土佐日記 一二・二二
「上(かみ)中(なか)下(しも)、酔(ゑ)ひあきて」
[訳] 身分の上の者も中の者も下の者も十分に酔っぱらって。
参考
中古以降、「あかず」「あかで」の形で使われることが多い。
あ・く 【開く・空く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
ひらく。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「立て籠(こ)めたるところの戸、すなはち、ただあきにあきぬ」
[訳] 閉め切っておいた所の戸が、すぐに、ただもうどんどんひらいてしまった。
②
(すきま・穴などが)あく。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「あける隙(ひま)もなく守らす」
[訳] あいているすきまもなく守らせる。
③
欠員ができる。
出典更級日記 富士川
「この国、来年あくべきにも」
[訳] この国は来年(国守の)欠員ができるはずであることに対しても。
④
ある一定の期間が終わりになる。
出典源氏物語 松風
「今日は六日の御物忌(い)みあく日にて」
[訳] 今日は六日間の御物忌みが終わりになる日なので。
活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}
①
(閉じていたものを)あける。
出典和泉式部集
「門(かど)もあけねば、御使ひ待ち遠にや思ふらむ」
[訳] 門もあけないので、お使いが待ち遠しく思うだろう。
②
(すきま・穴などを)あける。
出典源氏物語 蜻蛉
「道あけ侍(はべ)りなむよ」
[訳] 通り道をあけてしまいましょうよ。
あ・く 【明く】
活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}
①
(夜が)明ける。
出典から檜葉 俳諧
「白梅(しらうめ)にあくる夜(よ)ばかりとなりにけり―蕪村」
[訳] ⇒しらうめに…。
②
(年・月・日・季節などが)改まる。
出典方丈記
「あくる年は立ち直るべきかと思ふほどに」
[訳] 改まった年は立ち直ることができるかと思っていると。
あく 【悪】
道徳・正義・良心などにそむくこと。悪いこと。
出典徒然草 九一
「吉日(きちにち)にあくをなすに必ず凶なり」
[訳] 吉日に悪いことを行うと、(結果は)必ず凶となる。[反対語] 善。
あく- 【悪】
人名などに付いて荒々しくたけだけしいの意を表す。賞賛の気持ちでいう。「悪七兵衛(あくしちびやうゑ)景清(かげきよ)」
あく 【灰汁】
灰を水に浸してできる上澄みの汁。洗濯、染色に用いた。
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