学研全訳古語辞典 |
き・く 【利く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
役に立つ。
出典枕草子 能因本・うらやましきもの
「双六(すぐろく)打つに、敵(かたき)の賽(さい)ききたる」
[訳] 双六(すごろく)を打っていて、相手のさいの目がうまく役に立ったとき。
②
上手である。巧みである。
出典諸国ばなし 浮世・西鶴
「亀井(かめゐ)は、何をさしても小刀細工がきいた」
[訳] 亀井は何をさせても、小刀細工が巧みであった。
き・く 【聞く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
聞く。耳にする。
出典徒然草 一九一
「もの言ひたる声も、暗くてききたる、用意ある、心にくし」
[訳] 何かものを言っている声も、暗い中で聞いたのが、気くばりがあるのは、奥ゆかしい。
②
聞いて、知る。伝え聞く。
出典徒然草 五二
「ききしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ」
[訳] (石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)は)うわさに聞いたのよりもまさって、尊くていらっしゃった。
③
従う。承知する。
出典伊勢物語 二三
「親のあはすれども、きかでなむありける」
[訳] 親が結婚させようとするけれども、承知しないでいたのだった。
④
尋ねる。
出典好色一代女 浮世・西鶴
「『何をかあそばして、かく年月か』ときけば」
[訳] 「どんなことをなさって今まで過ごして来られたか」と尋ねると。
⑤
味わいを試す。
出典伯母が酒 狂言
「良い酒か悪(あ)しい酒か、私の一つきいてみずはなりますまい」
[訳] 良い酒か、まずい酒か、私がちょっと味わいを試してみなければならないでしょう。◆「きい」はイ音便。
⑥
(香を)かぐ。
出典好色一代女 浮世・西鶴
「手前に香炉の回る時、しめやかにききとめ」
[訳] 自分の前に香炉がまわってきたとき、しとやかに香をかぎわけて。
参考
奈良・平安時代には、耳にする、あるいは、聞いて知る、の意がふつうで、尋ねるの意となることはほとんどない。尋ねるの意には「問ふ」を用いるのが一般的であった。
きく 【菊】
①
植物の名。また、その花。[季語] 秋。
出典笈日記 俳諧
「きくの香や奈良には古き仏たち―芭蕉」
[訳] ⇒きくのかや…。
②
襲(かさね)の色目の一つ。表は白、裏は蘇芳(すおう)。一説に、裏は青または紫。陰暦九月に着用。菊襲。
③
模様の一つ。菊の花・葉などの形を表したもの。
参考
①は中国原産で、長寿の花としても伝わったらしく、重陽(ちようよう)の節句の日には、宮廷で「菊の宴」が行われ、「菊の酒」「菊の綿」などを用いて長寿を願い祝った。
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