学研全訳古語辞典 |
け-しき 【気色】
①
(自然の)ようす。模様。
出典枕草子 正月一日は
「正月(むつき)一日は、まいて空のけしきもうらうらと」
[訳] 正月一日は、一段と空のようすもうららかで。
②
(人の)ようす。そぶり。表情。態度。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「切(せち)に物思へるけしきなり」
[訳] しきりに物思いにふけっているようすである。
③
きざし。兆候。
出典枕草子 心もとなきもの
「子産むべき人の、そのほど過ぐるまでさるけしきもなき」
[訳] 子を産む予定の人が、その時期を過ぎても産まれるきざしがないの(は、不安である)。
④
機嫌。心の動き。
出典土佐日記 一・一四
「かぢとり、けしき悪(あ)しからず」
[訳] 船頭は、機嫌が悪くない。
⑤
意向。心に抱いている考え。
出典源氏物語 桐壺
「春宮(とうぐう)よりも御けしきあるを」
[訳] 皇太子からも、(妻にしたいとの)ご意向があるのを。
⑥
特別な事情。わけ。
出典源氏物語 葵
「若き人にて、けしきもえ深く思ひ寄らねば」
[訳] 若い女房で、特別な事情も深くは察することができないので。
参考
「けしき」と「けはひ」の違い 「けしき」が視覚でとらえた自然・人などのようすを表すのに対して、類義語の「けはひ」は、視覚によってはとらえられない、あたりにただよう雰囲気を表す。
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