学研全訳古語辞典 |
し-く
…たこと。
出典万葉集 一五七七
「秋の野の尾花が末(うれ)をおしなべて来(こ)しくもしるく逢(あ)へる君かも」
[訳] 秋の野のすすきの穂先を押し倒して来たことのしるしが著しくて(=かいがあって)会うことのできたあなたですね。◆派生語。
なりたち
過去の助動詞「き」の連体形+接尾語「く」
し-く 【四苦】
人生での四つの大きな苦しみ。生苦・老苦・病苦・死苦。◆仏教語。
し・く 【如く・及く・若く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
追いつく。
出典万葉集 一一五
「後れ居て恋ひつつあらずは追ひしかむ」
[訳] 後に残って恋い慕うのではなく追いつこう。
②
匹敵する。及ぶ。
出典新古今集 春上
「春の夜の朧月夜(おぼろづくよ)にしくものぞなき」
[訳] ⇒てりもせず…。
し・く 【敷く・領く】
活用{か/き/く/く/け/け}
一面に広がる。広くゆきわたる。
出典千載集 春上
「霞(かすみ)しく春の潮路(しほぢ)を見渡せば」
[訳] 霞が一面に広がる春の海路を見渡すと。
活用{か/き/く/く/け/け}
①
平らに広げる。一面に並べる。
出典万葉集 一〇一三
「門(かど)に屋戸(やど)にも珠(たま)しかましを」
[訳] 門にも戸口にも珠を一面に敷いたでしょうに。
②
(あまねく)治める。
出典万葉集 一六七
「天皇(すめろき)のしきます国と」
[訳] 天皇がお治めになる国として。
③
広く行きわたらせる。
出典徒然草 一七一
「師(いくさ)を班(かへ)して、徳をしくには及(し)かざりき」
[訳] 軍隊を引き返して、徳を広く行きわたらせることには及ばなかった。
注意
[二]の②の意味は現代語にはない。
し・く 【頻く】
活用{か/き/く/く/け/け}
次から次へと続いて起こる。たび重なる。
出典万葉集 四五一六
「新(あらた)しき年の始めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よごと)」
[訳] ⇒あらたしき…。
活用{か/き/く/く/け/け}
〔動詞の連用形に付いて〕しきりに…する。
出典万葉集 二四五六
「ぬばたまの(=枕詞(まくらことば))黒髪山の山草に小雨降りしき」
[訳] 黒髪山の山の草にしきりに小雨が降る。
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